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技術って誰のもの?

私はニット修理の技術を持っています。
お店を初めて技術でお金を頂くようになってから、ずっとこの問いが自分の中にありました。


「技術って誰のもの?」


私のもの? だから好きなように扱っていい? 好きなようにお金を貰っていいの?
昔勤務していた会社で技術を学んだからその会社のもの?
会社のものというより、そこで働いていた人たちのもの。
では、私に教えてくれた先輩方のもの?
けれど、私ができるようになったのは私の努力もある。私のものでもある。
とはいえ、私のものとして好きなように扱ったら、教えてくれた先輩方に失礼な気がする。
先輩方が創意工夫して技術を向上させていたのを見ていたからです。
私だけのものとして使えば、不愉快なると思っていました。
私はあの会社でよくぞここまで教えてくれた! と感謝してるので、不愉快にさせそうな扱いは避けてきました。


スタッフを雇って技術を教えたこともありました。
教えた技術は私のもの? ニットキュアのもの? それともスタッフのもの?
スタッフに教える過程で技術が改善されました。上手く伝えるために、私が工夫をしたからです。
では私のオリジナル? 私のものになったの?
多分私が教えてもらう時も、先輩方は工夫したはずです。では先輩のもの?
でも先輩だって誰かに教えてもらったはず。すべてがオリジナルではないはずです。

そうは言っても、技術を学んだ人は自分の人生で自由に使うことができるようになります。


私のものでありそうで、教えた相手のものにもなる。
私のものでありそうで、教えてくれた方のものでもある。


ミームと言う考え方があります。遺伝子のジーンと模倣のミムを合わせて作られた言葉で脳から脳へと伝わる文化の事です。
修理の技術はまぎれもなく「ミーム」です。
文化だから私のものもあるし、他の人のものにもなる。
私が好き勝手使うと、不愉快に思う人がいる。


結構TVに出てる私が言うのもなんですが「技術凄いから私も凄い! 凄い私ウェーイ!!」には思えません。
(時々TVでそう紹介されて苦笑いする時があります)
私のものでありそうで、私が好きに使っていいものでもない。


私は技術を預かりものだと思っています。ニットの修理店で3年働いてニット修理の凄さ楽しさ大変さを見てきました。技術があれば全てが解決するわけではなく、技術があるがゆえに翻弄される姿も見てきました。それも含めて技術だと思います。
技術は道具、どう使うか? にかかっています。


そんな中「先人たちから伝えられた技術を磨いて次世代に伝えていく」のが私の仕事と思うようになりました。
ニット修理の技術は歴史が浅いはずです。まだまだできる人も少なく、系統だっていません。
だからこそ、今の内に纏めていく必要があると思います。
それと同時にどう使うか? それも一緒に伝えていきたい、明文化していきたい、そう思います。

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