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10年目の挨拶

とうとうニットキュアは開店から10年になりました。
縁あった、皆様に心より感謝いたします。ふりかえりつつ、これからの事を書きます。

10年前、いろんな条件が重なって思い切って開業する事にしました。
私の場合はノープランです。本当に勢いで始めました。自分の貯金100万円を元手に、部屋を借り、チラシをつくってみました。

大きな転機はホームページを持ったことです。元々私は趣味でホームページを持っていました。だから、始めるのにお金がほとんどかかりませんでした。
さすがにドメインは必要だろうと、ドメインを借り、サーバーを借り、年間2000円位の出費で始めました。最初はDMや電話でも営業をしていました。だからサイトを使った営業は一番お金がかからなかったんです。昼はDMや外回りをして、夜は自宅でポチポチパソコンをいじっては、ホームページを作り、SEO対策をしていました。

ノープランでしたが、大事にしたいポイントはありました。

・修理品は基本的に宅配で対応する(ターゲットを全国にするため)
・ターゲットは全国(ニッチな市場なので、浅く広く)
・顧客は個人客を中心にする(ニット修理が浸透していないので、安く売らないですむ)
・自分からは品物を取りにいかない(デパートなどは取りに行くのが基本)
・自分は修理をする事をやめない(もし人を雇っても、現場からは離れない)

ホームページを作る時、他店を参考にしようとしましたが、参考になるサイトはほとんどありませんでした。

・ニット修理店でサイトをもっている所は日本全国で5店舗位
・ほとんど更新をしていない様子
・インターネットを通じて B2C 取引をメインにしている所がない

でも、ニットの修理をしたくて困っている人は必ずいると思っていました。
というより分かっていました。

それに気づいた時に、自分のしたい商売がそのまま市場のニーズに当てはまる事に気が付きました。また競合他社がいないことに気が付きました。

私はもともと大きく稼ぐつもりはありませんでした。自分の生活ができる程度で良かったんです。それぐらいなら、素人のホームページでもなんとかなるんじゃない? と思いました。
そして始めて見ると、DMや電話営業よりもホームページが一番効率がいいことが分かりました。そこで徐々にホームページに集中していきました。
ネットを使った集客も色々試してみました。楽天もやりましたが、2か月で早々に辞めました。理由はざっくりまとめると、かかるコストに対してリターンが少ないからです。楽天の経営も垣間見ました。これは自分か楽天で買い物する時に、役立つ情報になりました。学ぶのに数十万かかりました。今でもこの損切りは正解だったと思っています。

そしてホームページでの営業は流れに乗るまでに、約半年かかりました。
経営的に安定するのに3年位かかりました。

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ホームページに修理金額や修理の詳細をどう紹介するかに、一番悩みました。

・サイトを中心に営業するのなら、金額や詳細、注文システムをのせなくてはいけない。
・顔が見えないネットだからこそ、安心できる店正直な店だという事を表現しなくてはいけない。
・ホームページに金額や詳細、注文システムを載せるという事は、他店などに公開する事にもなる。
・それは自分でライバルを作る事にもなる。
・でもそれは、私が基準を作る事にもなる。

でも、自分もインターネットの恩恵を受けているんだし、情報の共有での損はあきらめました。
そして、10年経ち、案の定マネされました。

同じ注文システムの店は少なくても3店舗増えました。
他にも値段設定、編み目のサイズによる値段の設定、繁忙期への対応、などなど。

私は人間が出来ていないので、悔しい気持ちがあります。
でもそれ以上に公開する事での、恩恵を受けました。
そして、私の考えが合っていた証拠にもなりました。
10年前、私が商売を始める時私の周りの友人知人は「まーたこの人、突拍子もないこと言ってるよー。商売なんて、そんな甘くないよ。上手くいかないに決まってる」という顔をしていました。
それは私が、自分が始めたい事を上手く表現できていなかったからもあります。
そして、10年経って、やっと少しずつ形になってきた感じがします。

私はニット服の修理に関する知識をもっとサイトに載せたいと思っています。
できないのは、私の表現力の乏しさです。忙しいことを言い訳にしてなかなか進みません。
本当はもっともっと紹介したいです。

直接来てくれる方には私の修理の技術を教えています。
(有料です。真剣に覚える方に教えたいからです。私の時間は有限なので、制限を設けるためです)

技術を表に出さないことが、技術や仕事を守る事だとは思っていません。
大変な事をやっているからこそ、知ってもらう必要があります。そうしないと価値が分かってもらえません。

この10年、私なりに商売を通じて社会を見てきました。
服の修理は社会を良くする力があると思います。サービス業でありながら人間にとって大切な「衣食住」に直接関われる存在だからです。
まだまだニット服の修理市場は小さいです。でもこれからもっと大きくなるでしょう。その中でよい循環が生まれる事を願っています。

しかし、私ひとりでは限界があります。だからこそ他の方の考えも必要です。その為にも情報を公開します。

誰かが私以上に、いいアイデアを形にしてくれることを楽しみにしています。

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