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これからのニット修理店

今年最初のコラムなので、これからのニット修理店について書いてみたいと思います。
まず現状のニット修理店のパターンを分けます。

大きく分けて3つだと思っています。

1) 専門店 個人型
   ニットキュアのように職人ひとりで修理から経営まで行う。(個人事業主・法人)

2) 専門店 チーム型
   職人が複数人いて、経営者が別。多くは、営業や外回りの担当の人がいて、職人以外のスタッフがいる。

3) 洋服の修理店・工場併設型
   衣類の修理や製造をする傍ら、ニット服を修理する。ニット服を修理できる職人がいるので、サービスが提供できる。メインではなくサブ的に作業する。


3は、パターンが複雑と言う事と、メインの経営がニット服修理ではないので、今回は1と2について考えたいと思います。

メインは私の経験した個人型店舗とチーム型店舗から見たメリットデメリット、そしてこれからを考えてみます。


●個人型を10年以上経営してきて
一番の利点は、お客様別に丁寧な対応ができる事だと思います。

でもそれは同時に、売り上げに限界がある事でもあります。修理店は修理の仕事だけをしていれば言いわけではありません。お預かり中のお品物管理はもちろん、お客様への対応や説明も大事です。経理や事務的な経営的なこともしなくてはいけません。全体の仕事の半分以上は、こういった修理作業以外に使っています。ひとりでこなすと、修理時間はそんなに沢山とれません。ですから、おのずと自分の得意分野に集中していきます。

ただ、実際にやってきて思うのは売り上げがそこそこだから、ひとりでもこなせるとも思います。

特に経理に関しては、税理士に入ってもらわずにすんでいます。法人化してからもずっとひとりで作業できています。困ったら、税務署に聞くのですが、小さい規模だからこそ聞きやすかったりします。「毎年、同じようなこと聞いてすいません…」と、聞きながら申告から納税までできています。税理士などの支払いがない分、費用が安く抑えられます。

そして繰り返すことで、税金や社会の仕組みの知識がついてきました。ニュースも理解できる内容が、ずいぶんと増えました。今年から始まるインボイス制度も、自分で経理をしていたお陰で移行がスムーズでした。

規模が小さいと困るのは、大きい道具の購入がしにくい所です。例えばミシンです。当店もミシンを4台購入しましたが、そんなに種類を使いこなせません。普段ひとりで扱うには2台が限度です。

アイロンもそうです。家庭用スチームアイロンの方が、逆に小回りが聞いて使いやすいので、割りきって家庭用を使い倒しています。アイロン台だけ業務用を使いますが、アイロン本体は家庭用のままです。

専門的な道具が揃えられないのか、揃えないで済むのか、ジレンマです。



昔はチーム型(それもかなりの大所帯)で働いていました。ニットキュアも実は何度かスタッフを雇った事もありました。



チームの時には他の人にわかりやすいように、管理に統一性を持たせなくてはいけません。なので、一行程ごとに一旦締めるというような作業が発生します。でもひとりだとそれも必要ありません。

分かりやすいところでは、丈詰めの作業です。チーム性だと、ほどきの行程・はぎあわせの行程・仕上げの行程と分けて行います。それをひとりだと、行程を省くことができます。ほどきながらはぎあわせの糸の準備をすることもできます。なんなら仕上げまで見通した準備をして一気に作業を終えることもできます。時間が短縮できるのはもちろん、糸始末が減ります。行程や糸始末が減ると、修理跡が減ります。

お店側にも嬉しいし、お客様にとっても嬉しい結果がでました。これが分かりやすい個人店のメリットであり、私の得意分野をいかせることでもあり、工夫がすぐに結果として現れて、私の性格に向いているところだと思います。



もちろんそういった工夫はチーム型でもする事ができます。でもそれが生きるかどうかは、経営者次第だとも思います。

なぜなら、チーム型では工夫して作業が早くすむと、一般的には次の作業が入ってきます。時給制の従業員の立場としては、頑張って仕事を早く終わらせてもお給料には反映しません。それどころか、頑張るほど損をしてしまいます。

頑張った場合に経営者が還元してくれるかどうか。チーム型で職人をやる上での、一番大きな壁になると思います。

もちろん、ほどほどに手を抜くという事もできまし、それを勧められました。でも、私はそうはしたくなかった。「あれをしたら?」「これを工夫したら?」ということを考えたかったし、試したかった。なんなら、クレーム品を扱いながらも受注の仕方を工夫すれば防げたのではないか?と考えていたし、試したかった。だから、個人型になって全てが自分で責任をとれる立場になって、楽になりました。失敗も成功も全部自分のものです。頑張って早く作業ができるようになれば、売り上げに反映します。余裕ができれば、勉強したり、余暇に使うこともできます。

なってみて以外だったのは、私はひとりの方が作業効率が上がります。ぼっちで机に向かうと格段に効率が上がり、1.5倍は早く仕上がります。ですから、圧倒的にひとりで個人型経営の方が効率が上がります。



でも、全ての人に向いているとは思えません。最近は「自分らしい生き方」と起業をする風潮がありますが、向き不向きがあります。

経営のリスクをとりたくない人、とれない立場の人もいます。人と一緒の方が仕事が進む人、アイデアが膨らむ人。経営陣に作業を決めて欲しい方も、もちろんいると思います。そういった方はチーム型の方が向いていると思います。



起業当初は、ニット修理でご相談いただいたことにほとんど対応してきました。ニット以外の素材でも、工場から100着単位のご依頼でもしました。ニットの修理というよりDIYに近い作業もありました。毛糸を探すことから編み地を作る作業もしていました。外注さんに編み地を発注してのリメイクもしていました。でも、私ひとりの時間では限界があり、できなくなりました。そして、次第に自分の得意分野が見えてきて、だんだんそれに特化していくようになりました。

それは仕事のパターン化に繋がります。それでも毎回微妙に違うのが、修理の面白い所でもあるのですが、仕事が固定化してしまうことにもなります。そこはジレンマです。



職人数が多いチーム型なら、思いきった大型の作業もチャレンジできます。他の職人が通常業務をサポートできるからです。職人それぞれの得意をいかすためにも、イレギュラーなパターンも受けることができるかもしれません。


●ニット服の修理という市場
黎明期にあたると考えています。

まだまだお店の数は少ないです。お店が増えたように見えても、何店舗か、止めていったお店も知っています。

最近辞められてショックだったのは、楽天に出展してたニット修理店です。

秋冬の繁忙期は急いでるお客様が増えます。他に頼む店がないと泣きつかれたことも多々あります。少しニット服の修理店が増えてきたので、私も少し気持ちが楽になりました。家庭を守るために、断らざる負えないこともあります。他店様にどうぞ、と言えるようになってきて肩の荷が降りました。

楽天のお店は安心してご案内できていたのに、それができなくなって困りました。

それ以外のお店で、個人のお客様に自信をもってご案内できるお店を私は知らないので、困っています。




洋服の修理も市場としては、まだまだ小さい方だと思います。

ニットキュアも10年以上ですが、まだ多くの方が「ニットを修理できるなんて知らなかった」とおっしゃいます。隠れたニーズも多くまだまだ大きくなれる市場だと思います。そして、小さい個人店が増えれば、本当はいいことなんだろうと思います。

当店はネットを通じて、お客様と話をしますが、本当は直接合う方がいいはずです。

これも私の時間不足のために、当店は来店を制限するようになってしまいました。



お洋服を直接見ながら、修理について相談できればお客様の深い納得に繋がります。仕上がりについての説明も、イメージしやすいはずです。ネットでは伝わりやすい情報と、そうでない情報があります。当店は今は、ネットに特化していることで、直接会う必要のあるお客様や情報を取りこぼしていいるような気がします。

ニット修理店はもっと増えてもいいと思います。数が増えれば、お客様はお気軽に相談に行けます。

お客様の満足度はもちろん、市場の開拓になります。そしてそれは個人店の方が小回りが効くので、向いていると思います。



起業当初、衣類販売店舗から、修理品を引き取りに来て欲しいと言われました。でもひとりで営業する上で、作業時間の確保は必要です。引き取りにうかがうのは一切お断りすることにしました。個人型ではひとりずつ丁寧な対応はできますが、お店に合わせてくれる方に限られてしまいます。店舗さんからのお仕事というのは枚数が多いものです。しかし、そこは諦めざる負えませんでした。

そこはチーム型の強みが生きる市場だと思います。
個人型とチーム型と別々な市場があると思います。


●個人型とチーム型は共存できる
東京に住んでいれば、東京のお客様に出会いやすいですし、関西に住んでいれば、関西のお客様に出会いやすい。

そんな風に市場にも得意分野があります。
ニット修理専門店での個人型とチーム型は、市場も、得意分野も、できる作業の幅も違います。
そしてなにより、働く人のタイプも違います。



そんな得意不得意や、メリットとデメリットを上手く使って、職人にお客様に経営に社会に、嬉しい組み合わせがでれば良いと思います。

一番大事にしたいのは職人です。私がそうだから、ではなく、私が学んだ相手が職人だったからです。

お世話になったその人たちにも良いようになって欲しい。それが恩返しになると思うからです。

修理の仕事は、やりがいがあります。だからこそやりがいをきちんとリターンに結びつけて欲しい。

それには経営的なアプローチしかありません。職人が自分を生かせる仕事場を選べることが大事だと思います。

今はそれが、少なすぎるなぁと、残念です。

良い組み合わせが増えることで、みんなの嬉しいが増えて欲しい。


そして出来得れば、私が自信をもって安心して紹介できるお店が増えていって欲しいです。



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おまけ

今年最初のコラムといいながら、2月になってしまいました。とほほ。
OneDriveなるもので、データを同期させようとして失敗してしまいました。デジタル化してスマートに生活できるはずだったのに、実際はもたもたしています。

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